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なぜ東京は「フリーWi-Fi都市」になったのか ~東京の無料公衆無線LANと「2020」(前編)

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東京のフリーWi-Fiスポットは、ここ数年で大幅に増加しました。Wi-Fiコラム編集部調べでは、もっとも高密度にフリーWi-Fiがある千代田区では、1平方キロメートルあたり70ものWi-Fiスポットが存在します。今や押しも押されもせぬ"Wi-Fi都市"といえる東京。なぜ無料のWi-Fiスポットはここまで増えたのか、そして「2020」との関係は? 東京のWi-Fi整備のこれまでとこれからを、前後編に分けて紐解いていきます。

NTTBPで、東京都が提供するフリーWi-Fi「TOKYO FREE Wi-Fi」(SSIDはFREE_Wi-Fi_and_TOKYO)の営業担当をしているUさん、そして23区など都内の市区町村をはじめ、さまざまな施設のWi-Fiを担当しているSさん、Aさんの3名にお話を伺いました。

東京都内にはどれくらいのWi-Fiスポットがある?

Q.今回はどうぞよろしくお願いします。さっそくですが、都内のWi-Fiスポットは、交通拠点や公園、公衆電話やお店など、ありとあらゆるところにありますが、現時点ではどのくらいのスポット数があるのでしょうか?

――Uさん:東京都がサービスを提供している「TOKYO FREE Wi-Fi」では、Wi-Fiのアクセスポイントの数でいうと約1,000台ですね。Wi-Fiスポット数とすると、大よそ700箇所くらいです。1箇所に複数台のアクセスポイントを設置しているところもありますからね。

――Sさん:東京都が設置されているものに加えて、都内には当社が設置したものだけで30,000台を優に越えるアクセスポイントがあります。市区町村や企業がサービス提供するフリーWi-Fiだけでなく、NTTドコモなどのキャリアWi-Fiや、コンビニエンスストアのWi-Fiも提供していますので、都内で「Wi-Fiを使いたいな」と思った時に、近くにある存在になっていると思いますね。

Wi-Fiスポット急増の契機

Q.どうしてそんなにWi-Fiスポットが増えたのでしょうか?

――Uさん:やはり2013年に、東京オリンピック・パラリンピックの誘致が決まったからですね。翌2014年には、東京都がアンケートやヒアリングを実施し、訪日外国人の方たちがよく足を運ぶエリアを選定するところからはじまりました。

Q.訪日外国人の方に人気のエリアというと「浅草」とか「新宿」などでしょうか?

――Uさん:はい。はじめはエリアから選定していったのですが、それだとWi-Fi整備をするにも広域すぎて、費用がかかりすぎてしまうんです。そこで、その中でも都立の観光施設のある場所、あるいは街なかでも、より観光客の方が滞留する場所に絞ることにしました。

Q.滞留しやすい場所をどうやって調査したのでしょうか。

――Uさん:これには当社のWi-Fi接続アプリの位置情報データを活用しているんですよ。英語や韓国語といった多言語のユーザー行動データを分析して、人が多く居そうな場所にある公衆電話ボックスや観光標識などを中心に構築していきました。

約500箇所の公衆電話へのWi-Fi構築

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Q.Wi-Fiステッカーが貼ってある公衆電話、東京ではよく見かけますね!

――Sさん:そう言っていただけると、苦労が報われます。公衆電話へのフリーWi-Fi設置は公道に付けることが多く、通常に比べて事前の申請などプラスαの稼働も必要でしたので。 今では都内の公衆電話約500箇所にWi-Fiアクセスポイントが設置されているので、東京にいらっしゃるお客さまの利便性は向上しているのではないでしょうか。

Q.そうだったのですね、ちなみに、特出された取り組みはありますか?

――Uさん:そうですね。実は、公衆電話にはアクセスポイントと一緒にUPS(無停電電源装置)も設置しています。これによって、停電時にもフリーWi-Fiがお使いいただけます。

Q.てっきり観光強化が目的だと思ったのですが、停電時にも備えているということは、防災にも力を入れているということでしょうか。

――Uさん:東京都の一番の思いは「訪日外国人の方たちへのおもてなし」です。それは、観光だけではなく、何か有事の際にも困らないようにといった防災も含まれるんです。 "自分が生活している場所とは全く違う場所"で災害に遭遇してしまったら。それがさらに、異国の地だったら余計途方に暮れてしまいますよね。そういった不安を少しでもなくせるように、UPSサービスをご利用いただいています。

――Sさん:さらに東京のフリーWi-Fiの認証画面は多言語に対応しているので、外国人の方にも使いやすい。だから災害時の情報収集や、安否の確認や連絡のためのツールとしては、非常に有効なんじゃないかなって考えています。

東京都と他自治体の連携

Q.東京には「TOKYO FREE Wi-Fi」以外にも、23区をはじめとするさまざまなフリーWi-Fiがありますよね?

――Sさん:そうですね。東京都で制作されている「TOKYO FREE Wi-Fi」のホームページでは、Wi-Fiスポットの場所や利用ガイドなどが確認できます。そこには、「FREE_Wi-Fi_and_TOKYO」だけでなく、連携しているフリーWi-Fiサービスもしっかり掲載されています。自治体が提供しているフリーWi-Fiサービスはもちろん、都内の交通機関のWi-Fiも紹介されているので、"オール東京"としての情報がひと目でわかるんです。この取り組みって非常に大きいと思うんです。利用者からみて、非常に使いやすくなるという観点で。

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引用:TOKYO FREE Wi-Fi
https://www.wifi-tokyo.jp/ja/

Q.わあ、すごくたくさんありますね!

――Sさん:そうですね。ですが、NTTBP構築チームの数名のみで、これだけ多くのWi-Fiスポットを構築するのは難しかったと思います。私のチームは、NTT東日本やNTT西日本の営業サポートもしています。特に都内に関しては、NTT東日本東京事業部の方々が地域に根ざした営業活動を行っていただいているからこそ、ここまで広がったんだと思います。
営業活動をNTT東日本と分担することで我々は設計や構築に注力できるので、各市区町村ごとにきめ細かい対応ができました。

Q.そうだったんですね。こんなにさまざまなWi-Fiがありますが、サービスが分かれていることによる使いにくさはあまり感じませんね。

――Uさん:東京都のサイトで紹介されているWi-Fiはそれぞれ連携をしています。どこかで利用登録をすれば他のエリアでは登録が必要ないんですよ。

――Sさん:例えば、各市区町村がポリシーなど全然バラバラに、それぞれやりたいことをやっていったら、ここまで統一性のある"オール東京"としてのフリーWi-Fiにはならなかったんじゃないかなと思います。東京都が旗を振って、それに各市区町村が続くという流れができたのが、統一的なサービスを展開できているひとつの要因ではないかなと思います。

「前編」では、東京のフリーWi-Fiがこれだけ増えた背景や道のりについて伺ってきました。次回の「後編」では、「2020」での取り組みや、フリーWi-Fiのこれからについてご紹介していきます。お楽しみに。

関連リンク:無観客開催の影響とは......今後のフリーWi-Fiを考える  ~東京の無料公衆無線LANと「2020」(後編)
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/09/post-73.html

関連リンク:最も無料Wi-Fiがつながる街はどこ?! フリーWi-Fi密度ランキング ~東京都編
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/04/post-32.html

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