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フリーWi-Fiはなぜ減っている? コロナ禍、通信障害、格安スマホ......世相から見るフリーWi-Fi事情とは

Wi-Fiとfreeの文字が書かれたダイスと指さき

ここ数か月で、いくつかのフリーWi-Fiサービスが幕を引きました。コンビニで、駅で、たくさんの人に利用されていたフリーWi-Fiが、なぜ今その数を減らしているのでしょうか?

今回は、大手コンビニエンスストアや鉄道各社をはじめ、国内の主要スポットなど数々の公衆無線LANサービスの設置・運用を行ってきたNTTBPで、広報を担当する山口さんにお話を聞いてみることにしました。

NTTBPの山口さんが座っている人物写真

NTTBP 企画総務部 山口由香さん 
広報業務にとどまらず、サービス企画や営業アカウントとしても活躍中。

実際、フリーWi-Fiって減っているの? ユーザーの体感と別側面の数字

Q.フリーWi-Fiはなぜ減っているのかを確認する前に、フリーWi-Fiは実際に減っているのか教えてください。

――そうですね、当社だけのデータではありますが「アクセスポイントの設置数」という観点から見ると、減っています。「利用者が使えるフリーWi-Fiスポットの数」と置き換えて貰えればわかりやすいかもしれません。ただ、この一面だけを見て「フリーWi-Fiが減っている」と結論を出すのは、ちょっと待って欲しいんです。

Q.ただ減っているわけではない?

――もちろん設置数が減っているのは事実なんですけど、こんなデータもあります。SSIDの数に注目してください。順調に増加しているんですよ。

様々な場所で人と端末が繋がるネットワークをイメージした画像


Q.たしかに増えていますが......これって設置数とどう違うんですか?

――「設置数」は先述の通り「利用者が使えるフリーWi-Fiスポットの数」ですね。たとえばセブンスポットは全国に2万ほどありましたので、これが無くなると一気に減ってしまう数字です。一方、SSIDというのは、Wi-Fiネットワークの数です。「サービス数」と言い換えてもいいかもしれませんね。これが増えているということは、フリーWi-Fi設置をしているオーナーは増加していることを示しています。

フリーWi-Fi終了の決断は誰がしているの? スポット増加の歴史とは

Q.でも実際に、私がよく利用しているコンビニのフリーWi-Fiスポットはなくなってしまったんです。これ、減らしているのは誰なんでしょう。設置先の人ですか? それとも通信会社が決めているんですか?

――実はケースによってどちらもありえるんですよ。まずは、この話をより理解していただくために、先に知って欲しいことをお伝えしますね。ひとつは「誰がこの無料サービスの費用を負担しているか」ということ。もうひとつは、フリーWi-Fiというサービスが「どういう経緯で増えていったのか」ということです。まず費用負担についてです。フリーWi-Fiの設置や維持をするための費用は大きく分けると「携帯キャリア」か「Wi-Fiオーナー」のいずれかが負担しています。

Q.「Wi-Fiオーナー」というのは、設置しているお店などのことですか?

A. はい。商業施設や交通機関などの事業者や自治体が主なWi-Fiオーナーです。さらにはイベント主催者などの場合もありますね。「携帯キャリア」と「Wi-Fiオーナー」が費用を按分して負担するようなケースもあります。

Q.誰が設置や維持の費用を負担していたのか、考えたこともなかったです。

――多くの人にとってはそうかもしれません。実はこれ「スマホの普及の歴史」にも関係していることなんです。2010年あたりから、スマホが急速に普及したことで、これまでのガラケーとは比にならないほど、通信量が増加しました。爆発的な増え方だったので、携帯キャリア各社の基地局の増設等が追いつかず、モバイル通信がつながりにくい事態となってしまったんですね。そこで、携帯キャリアが考えた対策は「Wi-Fiへのオフロード」でした。つまり、できるだけ基地局ではない通信(オフロードに協力いただける店舗のWi-Fi)を使ってもらうことで、モバイル通信側の渋滞を緩和しようとしたんです。こうして、携帯キャリアが費用を負担する形で、Wi-Fiアクセスポイントが大量に設置されました。各キャリアのWi-Fiステッカーを街中で見かけるようになりましたよね。

Q.ドコモダケとか、確かに一時期ものすごい勢いで増えましたね。

――はい、それにスマートフォンの普及が加速して「Wi-Fi」はお客さまを呼べるサービスになりました。当時、通信量の多いプランの値段は高く、フリーWi-Fiへの期待は高かったのです。加えて同時期、訪日外国人観光客も急増します。諸外国ではスタンダードである旅行者向けのWi-Fiが日本では全然普及していないことは大きな課題でもありましたから。こうして、Wi-Fiの力でお客さまに来て欲しい、おもてなししたいという「Wi-Fiオーナー」が、行政の補助金などを活用したり、あるいは完全に自己負担で、Wi-Fiスポットを整備するパターンも増えてきました。

様々な場所で人と端末が繋がるネットワークをイメージした画像


Q.2020年には東京オリンピック2020も予定されていましたからね。

――それも要因のひとつですね。おもてなしに加えて、災害時の緊急通信インフラとしての活用も期待され、設置拡大に繋がっていきます。これが2つ目の「オーナー」負担のWi-Fi拡大の背景です。

Q.こうした背景でフリーWi-Fiスポットが使えていたんですね。私も、無料で使えるのをいいことに、今まであまりその背景や提供元の努力について知ろうとしていませんでしたので、そこはおおいに反省しています。

――無料というのは素晴らしいことですが、とても大変な試みなんです。今や"あってあたり前"とも言われますが、仰っていただいたように「提供し続ける努力」への理解が広まったら、フリーWi-Fiを取り巻く環境はより良いものになっていくと思います。

コロナ禍、5G......フリーWi-Fi設置数が増えていた当時と今、何が違う?

Q.ということは、廃止を決めたのは費用を負担していた方たち、ということなんですね。設置数がぐんぐん伸びていた時期と今では、どこが変わったんでしょう? 何か節目があったんでしょうか?

――ただひとつの理由、ではなく、様々な要因が積み重なっていると思いますが、大きなところでは「モバイル通信環境の整備」と「コロナ禍による影響」が挙げられます。5Gも含め基地局は整備され、モバイル通信だけで安定的に通信が可能になってきました。フリーWi-Fiにトラフィックを逃がす必要がなくなったんですね。また、利用者の視点では、政府が打ち出した施策によって、格安プランなどの登場で比較的安価な通信を手に入れ、フリーWi-Fiが不要な人も増えてきました。

Q.確かに今のスマホプランには、ひと昔前には考えられない安価なものもありますよね。ではコロナ禍の影響についてはいかがでしょう?

――これまで「おもてなし」としてWi-Fiが整備していた交通機関、観光施設、商業施設はコロナ禍で経済的に大打撃を受けました。サービス継続が困難な状況が続いているWi-Fiオーナーも少なくなかったのです。
あれほど盛況だった外国人観光客も激減し、外出自粛によりWi-Fi利用者も大きく減りました。

Q.こうやって並べると逆風だらけですね。失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、このような状況で、フリーWi-Fiはまだ必要なのでしょうか?

――必要です。先ほどもちょっと出てきたんですが、Wi-Fiスポット拡大の背景の一つには「災害時の緊急時の通信インフラの確保」がありまして、全国の自治体に対して、総務省が積極的に設置を促してきました。これは、この先どれほど携帯キャリアが基地局の拡充したとしても、変わらず必要なものなんです。

Q.記憶に新しいところでは、最近、キャリアで大きな通信障害がありましたよね。利用者が混乱する様子がいくつもニュースで取り上げられていましたが。

――実はあの時、フリーWi-Fiがこれまでにない勢いで使われているんです。
この表(下図)を見てください。こちらは全国の、通信障害時の状況を業種別に分け、増減率をまとめたものです。どれも認証数の増加に伴いトラフィックも増加しています。商業施設が認証数の増加に比べて、さほどトラフィックが増加していないのは、LINEや電子決済などの低トラフィックアプリ利用が多いからではないかと想定しています。通話やWEBブラウジングだけでなく、キャッシュレス決済や電子チケットなど、スマホはもう私たちの生活に欠かせないものになっています。社会インフラであるインターネットが、単一の手段でしか接続できない状態にしておくのは、望ましくありません。フリーWi-Fiがあったからこそ、通信手段がゼロでは無かった、という人もいる。これから同じように障害があった時、災害があった時などに必ず活用いただけます。フリーWi-Fiはこれまで通り必要であり続けると思います。

様々な場所で人と端末が繋がるネットワークをイメージした画像


変わりゆくフリーWi-Fiの役割。提供する側はどう変わっていくのか。

Q.時代とともに、Wi-Fiに求められる役割が変わって来たような感じがしますね。このような変化に対して、試みているアクションなどがあれば教えてください。

――NTTBPとしては、フリーWi-Fiの需要は下がりつつあるということは認めたうえで「もしも」の備えというだけでなく、新しい使い方を提案していければと思っています。逆に無線ソリューションの需要は高まっているので、うまく活用していきたいですね。
例えば、これまで提供されていたフリーWi-Fiの一部を業務にご利用いただけるタイプに変更し、テナント様に提供したりコワーキングスペースを新たに運営するといった活用も複数あります。
ひとつのアクセスポイントを、フリーWi-Fiとしても、業務に活用できるWi-Fiとしても利用しているんですね。当初の設置目的と異なる新たな使い方を試みるオーナーさんが増えているんです。
それに、フリーWi-Fiはまだまだ発展できるチャンスがあると思っています。いろんなことにチャレンジしたいですね。例えが突飛かもしれませんが、海の中をWi-Fiスポットにできたら色々なことがもっと広がるだろうな......とか。新たな無線技術によって、そんな世界も実現するかもしれませんよ。

Q.それは面白そうですね、これからが気になるところです。新しく慣習や技術が入れ替わる中、今後、フリーWi-Fiはどのような「強み」を持っていくのでしょうか?

――モバイル通信の世界に5Gが登場したように、Wi-Fiにも次々に新しい規格や技術が登場しています。新たな周波数帯として6GHz帯を利用でき大容量通信の期待できるWi-Fi6Eや、少ないアンテナで広いエリアをカバーできるWi-Fi HaLow™(IEEE標準規格802.11ah)の他、2024年にはさらなる高速化や大容量通信が可能となるWi-Fi7の実用化も控え、理論値30Gbpsの世界も夢ではなくなっています。
また、WPA3やEnphansed Openといったセキュリティ規格も進化しています。より便利で安全なWi-Fiが利用できるようになっているんです。また、さまざまな家庭用や業務用のデバイスが登場しています。汎用的な規格かつアンライセンスで使える通信であるWi-Fiの重要性は個人利用はもちろん、ビジネスシーンでも一層高まっていくでしょう。ますます使いやすくなることが、何よりの「強み」だと思っています。

Q.使いやすい、は一つのキーワード?

――そうですね。通信会社のひとつとして言えるのは、安心安全で、誰もが使える、どんな端末でも使える、使いやすい通信というものが必要で、フリーWi-Fiはその役割を担える存在だと思います。

「Wi-Fi=コスト」ではなく「新たなビジネスの種」。これからWi-Fiが在り続けるために

スマートフォンを別の端末にタッチする女性の写真


Q.もしかしたらこの記事を読んでいる方の中にも、Wi-Fiオーナーさんがいるかもしれません。
「そうはいってもコストだし...」と思われている方もいるのでは。

――確かに今は、Wi-Fiがあるからといって簡単にお客さまが増える時代ではないんです。でも、撤去してユーザーが減らない、ということではありません。おそらく減ります。Wi-Fi環境の有無は、観光客含め、さまざまな利用者にとって「選択の一助」になっています。そこは捨てるべき点ではないと思うんです。
それにフリーWi-Fiは、利用者が無料でネットができるというだけでなく、オーナーのビジネス機会が広がることに、気付いて貰える提案をしたいと思います。

Q.具体的なビジネスへの活用例を教えてください。

――フリーWi-Fiの利用状況を分析することによって、店舗の品ぞろえに生かしたり、フリーWi-Fi用のアクセスポイントを活用して、有料のサテライトオフィスを開始された例などがあります。他にも、ブライダルが有名なホテルベルクラシック東京様におかれては、2020年を見据えたホテル全館内の通信品質向上をお手伝いしましたが、コロナ禍で想定外の状況であっても品質の良いWi-Fiにより、ワーケーション利用などに切り替えることで、時代に即したサービスをスピーディにそしてタイムリーにご提供されていました。

Q.なるほど。メリットに気付きにくい、という側面があるのでしょうね。

――そうですね。あるオーナーさんが言った印象的な言葉があるんです。「店のトイレは綺麗なら何も言われない(褒められない)。でも汚ければたちまちクレームになる。フリーWi-Fiもそれと一緒」というものでした。トイレも、フリーWi-Fiも、誰かがコストを払って維持しているものです。けれどいつのまにか、あるのが当たり前、使いやすいのが当たり前になってしまう。知らずと上がるハードルと報われなさが、オーナーさんたちの負担になってしまったという面はあると思います。

Q.かく言う私も、オーナーさんたちの苦労どころか、運用の仕組みも知らずフリーWi-Fiを使っていた人間のひとりでした。今日のお話で、フリーWi-Fiを大事にしていきたいなと思ったんですが......設置数が減っている今、私たち利用者にできることって何かあるでしょうか?

――フリーWi-Fiが役に立ったら、ぜひSNSで発信してください! 使えたな、便利だったな、という情報をぜひ共有していただきたいです。ご利用者様の声やアドバイスは、オーナー様も私たちもみていて、今後のサービスの参考にしているんです。そうやって一層サービスをより良くしていくことで利用者側と提供者側の双方がもっと嬉しくなりますよね。

側にいてくれるのが当たり前になっていたフリーWi-Fi。これからの進歩と展開に期待していきたいと思います。ありがとうございました。

NTTBPでは、Wi-Fiスポットの設置、オフィスの無線LAN化、臨時アクセスポイントの設置など、さまざまなワイヤレスソリューションのお手伝いができます。お気軽にお問い合わせください。

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