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Wi-Fi6E、IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow)がそれぞれ日本国内で利用可能に。新時代のWi-Fi規格

Wi-Fiとfreeの文字が書かれたダイスと指さき

電波法改正で新しい規格のWi-Fiが利用可能に。二つの新たな周波数帯で

2022年7月15日(金)、電波監理審議会と呼ばれる、電波や放送に関わる会議がありました。そこで議題となったのが「Wi-Fi6E」、「IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow TM)」といった新しい規格です。会議では、この規格それぞれが「重要」で「必要」なものと確認されました。この新しい規格を正式に日本で使うため、法律改正の準備が進められ、そして2022年9月2日、9月5日に相次いで電波法が改正され、いよいよこれらが使えるようになりました。

Wi-Fi6Eってなに? 今までと何が違う?

Wi-Fi6Eとは2020年から広まった第6世代のWi-Fi規格、Wi-Fi6(IEEE 802.11ax)のさらにその次の拡張版です。
規格そのものは先代を踏襲しながら、今まで許可されていた2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、6GHz帯も使えることが大きな特徴となっています。

Wi-Fiとfreeの文字が書かれたダイスと指さき

6GHz帯も使えると、何か良いことがあるの?

新たに6GHz帯が使えることで、使えるチャネル数が増えます。これによって、どう便利になるのでしょうか。
ピンと来ない方は、道路を走る車を想像してみてください。狭い道だったら小さな車が数台しか通れませんが、幅の広い道だったら、たくさんの車が通れますし、大型トラックだって通れるのでたくさんの荷物が運べます。渋滞しにくいので、スピードも出せますよね。6GHz帯が新しく使えるようになることで、他の道路(周波数帯)の混雑が緩和されるだけでなく、より大きなデータを高速に送ることもできるようになる、というわけです。

Wi-Fiとfreeの文字が書かれたダイスと指さき

6Ghz帯では、20MHzというコンパクトな車線(チャネル)を用いるなら、なんと24チャネル利用もできます。2.4GHz帯では4チャネル、5GHz帯では20チャネルでしたので、大幅な拡張です。それだけでなく、今まではなかなか難しかった、複数チャネルを束ねた160MHzの幅広な車線も利用できます。それも3チャネルも!
実は、ひとつ前のWi-Fi6(Eがついていない、先代です)にも、この幅広い道を通るための仕組みが用意されていましたが、使える道路の数が少なかったために、全ての能力を使いきれていたとは言えませんでした。しかし、Wi-Fi6Eなら十分に力を活かせるでしょう。今までと同じ使用感で、今までより快適な通信ができると見込まれているのです。

どうしてWi-Fi6Eは待ち望まれていたのか

近頃はオンライン授業やテレワークも増え、Wi-Fiでのデータ通信量がかなり増えています。さまざまな業務用端末がオンラインで結ばれ、産業用途でもインターネットが不可欠です。2.4GHz帯や5GHz帯は混み合っていて場所によっては干渉が避けきれない状態でした。増加の一途を辿る通信量に対し、道路が今までのままでは、混雑は解消できません。「新しい周波数帯」という「混雑を逃がす場所」の創設は急務でした。

とはいえ、電波の特性としてはどんな周波数帯でもよい、というわけではありません。波長は長すぎても短すぎても扱いにくくなってしまいます。皆さんが普段利用しているWi-Fiと同じ電波特性で、かつ空いていた周波帯である6GHz帯は実用化が待ち望まれていたのです。

6GHz帯はWi-Fi以外の用途でも利用されている帯域です。そのため、他の通信に影響を与えないような出力レベルに制限されての利用開始ですが、十分活躍してくれるでしょう。

Wi-Fi6Eを使い始めるにはどうすればいいの?

今後発売される新たに販売されるルーターは「Wi-Fi6E」に対応するものが増えてくるでしょう。

訂正(2022.9.16): 今回の改正前に機能が制限された状態で販売されていた「Wi-Fi6E対応ルーター」について、今後のファームウェアアップデートで使えるようになる、との記載をしていましたが、新たな技術基準適合番号の申請が必要になるため、以前の製品については機能が内蔵されていたとしても、ファームウェアのアップデートでは国内での利用はできないようです。

また「Wi-Fi6E対応端末」についてもまだ少ないのが現状です。Androidの一部のハイエンド端末は対応していますが、iPhoneは現在未対応です。日本時間で2022年9月8日に新型「iPhone14」の発表がありましたが、Wi-Fi6E対応については言及されず、未対応のままとなっています。今後に期待しましょう。

IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow TM)ってなに?

IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow TMは「Wi-Fi」の仲間ではあるものの、みなさんが普段利用しているWi-Fiとはちょっと違っているかもしれません。

「1GHz未満のISM Bandを利用した新たなWi-Fiの規格」なのですが、簡単に言うなら「めちゃくちゃ遠くまで届く省エネWi-Fi」です。

関連リンク:802.11ahについて(802.11ah推進協議会)
https://www.11ahpc.org/11ah/index.html

IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow TM)の強みとは?

今までの規格より長い伝送距離が強みです。Wi-Fi6(IEEE 802.11ax)は100m程度の伝送距離に対し、IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow TM)は1㎞以上届くと言うのだから驚きです。条件を整えた実験では、なんと2.5kmも届いたとの報告もあります。「遠くまで届く」ということは「少ないアンテナで広いエリアをカバーできる」ことにつながります。さらに、非常に省電力です。
ただし、その分高速や大容量通信はあまり得意ではありません。あくまで理論値ではありますが、最大は20Mbps。Wi-Fi6の理論値が9.6Gbpsですので大きな差があることが分かります。

引用:802.11ah推進協議会 IoTにおけるWi-Fiの役割と802.11ah 第3回 802.11ahのユースケース

実は今までにも、このように省電力で広いエリアをカバーできる通信は存在していました。このような通信をLPWA(Low Power Wide Area-Network)と呼びます。既存のLPWAと比べると、圧倒的に大容量で高速な通信を行うことができます。先ほど、大容量通信は少し苦手、とお伝えしましたが、これはあくまでWi-Fi6などと比較したときの話で、LPWAと比較すると十分な通信速度が期待できます。
既存のLPWAはセンサーとゲートウェイ間での低容量データの送受信など、限られた用途での活躍でしたが、IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow TM)であれば動画データの送受信も可能です。センサーデータと監視カメラの画像を同時に送信する、といったこともできるでしょう。
また、あくまでWi-Fiの延長として使えるため、導入するのも比較的容易です。
スマート農業や漁業、大規模工場や商業施設などで利用されるIoTデバイスやスマートシティといった分野でも、より豊かな使い方が見られるようになるかもしれませんね。

引用:802.11ah推進協議会 802.11ahについて

IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow TM)はどうやったら使えるの?

海外ではすでに対応製品が販売され始めています。現在、国内外の複数のメーカーが、通信チップやゲートウェイなどの開発を進めているそうですが、存在を身近に感じるようになるのはもう少し先のことでしょう。けれど、これから私たちの未来を変えていく技術になるかもしれませんね。

見えない電波を意識して暮らしてみよう

目に見えないのでつい忘れてしまいがちですが「電波」は決して、無限に、無制限に使えるものではありません。私たちの暮らしの大切な、共通の資源である周波数帯を、法律やルールが守ってくれているんですね。他にも、9月2日の電波法改正では、私たちの暮らしと密接に関わる変更がいくつも加えられています。例えば「5.2GHz帯の自動車車内での利用」などもそうです。
今回ご紹介した電波法の改正についての官報は、WEB上で読むことができます。馴染の無い言葉が並んでいるかもしれませんが、ちょっと覗いてみるのも面白いかもしれませんよ。

関連リンク:新規制定・改正法令・告示 告示 - 総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_hourei/s_shourei.html

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