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通信障害の切り札? 災害時に活躍? 知っておきたいモバイル通信とフリーWi-Fiの関係について

モバイル輻輳のイメージ図

「スマホの通信が多くて渋滞しているから、Wi-Fiを経由して逃がそう」――時々聞かれるこの言葉、なんだか不思議ではありませんか?

端末をWi-Fiに繋ぐと、なぜ通信を逃がしたことになるのでしょう。

実際に、イベント会場など混雑した場所でスマホの通信(モバイル通信)は重くなり、よく繋がるフリーWi-Fiが歓迎されますよね。大規模災害時の「00000JAPAN」は、モバイル通信の「輻輳(ふくそう)」の対策の側面もあるそうです。しかし、通信障害があった時にWi-Fiが役に立ったという声が聞かれた一方で、一緒に使えなくなってしまったというWi-Fiスポットもあると聞きます。

一体、モバイル通信とWi-Fiは、私たちの見えない世界でどのように動いていて、どのように関係しているのでしょうか?

モバイル通信が繋がらなくなる代表的な原因は3つ

モバイル通信が繋がらなくなる原因は、主に3つのケースにわけられます。

繋がらない3ケースのイラスト化

  1. 基地局が遠かったり、電波が遮られて届かないため
  2. 携帯会社のアンテナやネットワーク機器に、故障などのトラブルが起こっているため
  3. 大勢の人が同じ場所で同時にスマホを使ったりして、通信が「輻輳」状態となっているため

「1」はイメージしやすいですね。地下にあるお店(バーなど)や、電車に乗車中の駅と駅の間など電波が届かず、圏外で繋がらないことは多くの人が経験していると思います。「2」については、自然災害だけでなくとも起こりえるということは記憶に新しいと思います。「3」は電波の渋滞によるものですね。花火大会やライブ会場、さらには大地震で一斉にみんなが安否確認をしようとしている時、スマホの電波マークが立っているのに使えないことがありますが、これがいわゆる「輻輳」です。

どれもモバイル通信にとっては大ピンチです。ですが、Wi-Fiなら助けてあげられるんです。

なぜ、モバイル通信が使えない時もWi-Fiは使えるの?

上の3つのケースに当てはめてみましょう。比べて見ると、モバイル通信とWi-Fiの違いが見えてきます。

Wi-Fiで繋がった3ケースのイラスト化

  1. 電波が届かなくても......
    →→光回線に繋いだWi-Fiがあれば、圏外であっても通信できる
  2. 携帯会社のアンテナ等がトラブルでも......
    →→モバイル通信と異なる基地と経路を辿る光回線を使っているので、障害に影響しない
  3. 大勢が使って「輻輳」状態でも......
    →→Wi-Fiが主に使っている光回線はモバイル通信ほど渋滞していないことが多い

そうです。Wi-Fiは光のインターネット回線を使っているのです。通信の用語で、基幹となる通信網と端末の間を繋いでいる回線を「バックホール回線」と呼びます。モバイル通信が使えない時でもWi-Fiが使えるのは、それぞれ別のバックホール回線を使っているからなんですね。

全てのWi-Fiが光回線を使っているの?

Wi-Fiがバックホール回線に「光回線」を使っているので、緊急時にモバイル通信と「とも倒れ」にならずに済んでいるということがわかりましたね。
では、Wi-Fiのバックホール回線はすべて、光回線なのでしょうか。例えば携帯キャリアの障害時でも全てのWi-Fiが変わらず使えるのでしょうか。

答えは「いいえ」です。通信障害時に、一緒に使えなくなってしまったWi-Fiスポットは残念ながら存在します。理由は、そのWi-Fiがバックホール回線に「光回線」ではなく「モバイル通信」を使っているためです。

モバイル通信を使っているWi-Fiも中にはある

モバイル通信を使ったWi-Fiにはどんなものがあるでしょうか? 例えば「モバイルWi-Fiルーター」や「ポケットWi-Fi」と呼ばれる機器は、Wi-Fiではあるものの、モバイル通信を使っています。携帯会社などから販売されている、コンセントを挿すだけで使えるお手軽さが売りの「ホームルーター」もそうです。どちらも家庭用の手軽な機器として人気ですよね。

ポケットWi-Fi装置のイメージ

それと同じように、公共のWi-Fiにもモバイル通信を使っているものがあるんです。例えばバスのような移動する環境で常に使い続けられる車内Wi-Fiのバックホール回線には、モバイル通信が使われています。他にも、持ち運びできる簡易なWi-Fiキット「キャリーバックWi-Fi」もそうです。

このようなモバイル通信をバックホール回線に持つWi-Fiは、私たちが普段使っているスマホのモバイル通信と根本的には同じものです。なので「Wi-Fi」という名前がついていても、キャリアによっては障害や輻輳の影響を受けるスポットがあります。「通信障害時にWi-Fiが役に立ったという声が聞かれた一方で、一緒に使えなくなってしまったWi-Fiスポットもあった」という出来事は、このような「モバイル通信をバックホール回線に持つWi-Fi」が原因です。

ではもし、これからWi-Fiスポットを構築したいと思った時、一体どちらのタイプを選べばいいのでしょうか?

Wi-Fiスポット構築時は目的に合ったバックホール回線を選ぼう

例えば「モバイル通信をバックホールに持つ回線」でWi-Fiスポットを作る際には、光回線の契約や配線工事は必要ありません。構築の初期費用が大幅に安価に済むこともあるでしょう。手軽に始められることはこのタイプの大きな強みですね。
けれど、もし「携帯の電波が繋がりにくいからWi-Fiを設置したい」という目的だったら、この選択は間違いです。同じバックホール回線である以上、設置しても今と同様に繋がりにくいことになります。そのような場所なら、光回線を引き込めば快適なWi-Fiが使えそうですね。やや専門的になりますが、近年では、光回線工事が難しい場所もインターネットに接続できるように、中継無線を活用するといった選択肢もあります。

では「災害時や携帯会社の通信障害時に使えるように設置しておきたい」という理由ならどうでしょう。バックホール回線がスマホのモバイル通信とは別になっていれば、いざというときの備えになりそうですね。この場合も「光回線をバックホールに持つWi-Fi」を設置したほうが良さそうです。さらに言えば「複数のバックホール回線で通信を確保」できればもっと安心ですね。

いつでも使えるからこそ知っておこう

普段私たちは、自分がいま使っている通信がどのようなバックホール回線を使って通信しているかを、意識することはほとんどありません。考える必要が無いほどに、全てが高品質で心地よく使える世の中になっています。けれど、敢えて目を向けて見るのも面白いかもしれません。常日頃は見えていない景色を知ることで、何だかインターネットの調子が悪い時や、トラブルがあった時、ふと役に立つことがあるかもしれませんよ。

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