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5GHz帯Wi-Fiの屋外利用は禁止って本当? 覚えておきたい「おそとWi-Fi」のルール

とあるカフェで、店長が考え込んでいます。

2.4GHz帯は干渉しているのかつながりが悪いし、店内で使っている5GHz帯のWi-Fiを、テラス席で使えるようにしたいなあ

何でもハンドメイドでやりくりしてきた店長。今回も何やら思いついたようですが......。

......そうだ! 長いLANケーブルでルーターを外に持って行こう!

待ってください! それって電波法で違法とされている行為かもしれません!

さて、皆さんはどの部分が違法となり得るか分かりましたか?

屋外での5Ghz帯の電波利用にはルールがある

正解は「5GHz帯のWi-Fiを外で使うこと」なんです。実は5GHz帯の電波は、電波法によって屋外の利用が規制されていて、無条件で使うことはできません。違反した場合は最大で1年以下の懲役または100万円以下の罰金となってしまう場合もあります。「ルーターを外に持ち出すだけだから」と軽視せず、よく確認しておきましょう。実は、家庭用のルーターにも「屋内限定」としっかり表記されているんですよ。使っているルーターの裏側を探してみてくださいね。

家庭用Wi-Fiルーター裏側の注意書き

ほんとだ......よく見るとちゃんと書いてある!

普段5GHz帯とおおざっぱに呼んでいますが、実はさらに細かくW52(5.2GHz帯)W53(5.3GHz帯)W56(5.6GHz帯)に分けられます。

周波数帯ごとの使われ方

W52(5.2GHz帯)W53(5.3GHz帯)についてはW52で一部例外的に認められているものもありますが、基本的には屋内専用です。W56(5.6GHz帯)は「DFS機能がついている」だけで屋外利用ができるので、比較的気軽に扱うことができます。

「干渉しにくく、速度も速い」......普段から屋内で大活躍の5GHz帯が、なぜ屋外では規制されているのでしょうか?

なぜ屋外で5GHz帯の電波は規制されているの?

人工衛星や空港気象レーダーとの干渉を避けるため

ご存じのとおり、同じ場所で同じ周波数帯の電波を使うと「干渉」して互いに満足に使えなくなってしまいます。電波は人類の共有財産であり、限られたスペースを分け合って使わなくてはいけません。

5GHz帯は既に、社会的に非常に重要度の高い分野で使われています。たとえば、人工衛星や、航空無線もそうです。仮に、これらの機器が使えなくなったとしたら、我々の生活や安全に大きな問題が起こってしまうでしょう。そのため、交通ルールと同じように電波のルール「電波法」を定め、総務省によって厳密に管理されています。

家庭用ルーターと人工衛星などが干渉しているイラスト

じゃあ逆に、なぜ屋内なら5GHz帯を使っても良いの?

5GHz帯は2.4GHz帯に比べて障害物に弱い特性があります。そのため、屋内での利用であれば壁や天井に阻まれて、気象衛星や航空無線などとの干渉の懸念が少なくなります。だから「屋内」のみの利用が認められているんですね。

なるほどなぁ。あ、でもうちの店のテラス席は、靴も脱いでもらうし、ひさしもあるし、屋内って言えないこともないんじゃないかな?

では、その「屋内」と「屋外」を決めているのは誰なんでしょう?

屋内外の定義は総務省の定めによる

総務省のホームページには、以下のように記載されています。

屋内や屋外でどの周波数帯が使えるかの図説

引用:総務省 電波利用ホームページ 無線LANの屋外利用について

これによると、車両内、船舶内、航空機内は「屋内」であると明記されていますね。自動車内だけは、条件付きでW52(5GHz帯)のみ利用できるようになっています。

基本的には「しっかりと四方が壁に囲われ、遮蔽効果のある建物の中」が屋内と定められています。逆に、電波を閉じ込めておけないような、開いた場所は屋外と考えましょう。

ってことは、やっぱりテラスは屋外かぁ......

5GHz帯の干渉を回避する秘密兵器DFSってなに?

W56ならDFS機能ってのがついていれば、屋外でも利用できるってことだったよな。DFSってなんだ?

5GHz帯のなかでも、W56(5.6GHz帯)だけは比較的簡単に屋外で利用できます。何故でしょうか。W56(5.6GHz帯)だけ何とも干渉しないのでしょうか? いいえ、5.6GHzも気象レーダーなどで利用されている帯域です。実は、W56(5.6GHz帯)も無条件で屋外利用できるわけではありません。DFS(Dynamic Frequency Selection)という秘密兵器の力が不可欠なのです。こちらをご覧ください。

DFS機能による切り替えのしくみ概要

DFS機能は、「干渉が起こりうるチャンネルでの通信中に、レーダー波を検知した場合、Wi-Fiの通信を自動的に停止して、他の干渉を与えないチャネルに変更する機能」です。私たちが気を付けなくてはいけない「今、通信して大丈夫か?」という確認を自動で行ってくれるわけですね。

モバイルWi-Fiルーターをよく利用する方は、接続前の「気象レーダー等との干渉を確認中」と言った表示を見たことがあるかもしれません。これが、DFS機能――屋外利用にだけではなく、屋内専用のW53にも搭載されている機能です。他の用途と共用する周波数帯を使うには、干渉を避ける機能が不可欠なのです。私たちの代わりに確認をしてくれる秘密兵器のおかげで、安心して使えているんですね。

一方で、干渉の懸念がある場合や確認中は電波が止まることもしばしばです。そのため、安定してインターネットを使いたい場合には不向きであるともいえます。

チャンネルスキャン中のモバイル機器

ってことは使えるけど止まっちゃうこともあるってことかぁ。なかなかうまくはいかないんだな


帯域を効率的に使う技術は進化している

Wi-Fiの利用は日々増加しており、電波干渉や帯域の確保については大きな課題となっています。それを解消すべく、電波の周波数帯の拡大については日々議論されています。DFS機能も限られた帯域を効率的に利用するための工夫の一つですね。

他にも5.2GHz帯利用の制度拡充があります。もともと5.2GHz帯は5.3GHz帯同様、屋内での使用に限られていました。ですが、平成30年には人工衛星に影響を与えない(上空側へ強い電波が出ない)工夫が施された専用機器を利用することなどの複数の条件を満たし、事前に「登録局」として申請を行うことなどで5.2GHz帯の屋外利用も可能となりました。さらに、令和4年にはそれまで「屋外」として使用できなかった自動車の車内も「最大EIRP40mW以下で技術基準適合証明等を取得した機器」に限り、W52(5.2GHz帯)の利用が認められました。

日々増加する無線機器を誰もが安心して使えるのは、このような干渉を避ける技術や制度のおかげなんじゃな。

外で使う時は、特別なこだわりがなければ、2.4GHz帯で

現在市販されているWi-Fiルーター等の無線機器は、ほとんど全てが「2.4GHz帯」と「5GHz帯」のどちらでも使えるようになっています。外で使いたい場合は、2.4GHz帯を使うように設定しましょう。
比較的新しい無線機器なら、6GHz帯が使用できる場合もあります。6GHzはVLP(Very Low Power)というモードを使えば屋外での使用が許可されていますので、搭載された機器を持っている方は、使ってみてもいいかもしれませんね。

屋外での電波環境に課題がある場合はプロへご相談を

そうか。屋外のお店やポケットWi-Fiは2.4GHz帯だらけだから、干渉して繋がりにくかったんだなぁ。うーん、理由はわかったけれど......どうしよう?

はい! そんな時こそ私たちプロにお任せください!

このように、5GHz帯の屋外利用にさまざまな制限があります。だからと言って2.4GHz帯ばかりに頼ると、今度は干渉で使いにくくなるでしょう。ただでさえ、屋外のWi-Fi設置は難しく、帯域に限らないたくさんの課題があるのです。風雨、潮風、野生動物、設置場所......さまざまなものに影響を受けてしまうため、漏らさず考慮するのは至難の業です。

そのため、屋外のWi-Fi構築は、屋内の構築よりも一層、ノウハウのある専門業者に任せることをおすすめします。例えばNTTBPの一夜城Wi-Fiなら短期の屋外イベントなどでも高品質なWi-Fiを利用できますよ。また、長くなりがちなDFS機能のスキャン時間を短くできる機器など、個人では用意が難しいエンタープライズ向けのアクセスポイントが使えることも大きな魅力です。

また、小規模なイベントであれば、持ち運びできるWi-Fi――「キャリーバッグWi-Fi」を使うという手もあります。こちらは電波法遵守で設計されていて、設置・撤去の手間もほぼないので、気軽に利用できます。一時的な設置が必要なら、ぜひ試してみて下さいね。

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