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日本初のスタジアム開催!ドローンレースの主催者に話を聞いてみた

並んでいるドローン

2023年12月16日、茨城県にある『県立カシマサッカースタジアム』でU99ドローンレースが開催されました。

ドローンレースとはその名の通り、ドローンを操作してタイムを競うレースドローンが撮影する映像をゴーグルで見ながら操縦する、"First Person View(ファーストパーソンビュー)"、通称FPVという方式で大会は行われました。

スタジアムでのレース開催は、なんとこの大会が国内初だそう。もちろん入念な準備が必要で、無線のプロフェッショナルとして、NTTBPもお手伝いをさせてもらいました。

今回は、イベント開催までの準備や無線環境整備に焦点をあてながら、実際に大会を主催したDrone Racing Team SNWの犬飼豊紀さんにお話を伺いたいと思います。ドローンレースには、操縦や映像伝送などにさまざまな無線技術が使われています。知られざるドローンレースの世界をWi-Fiコラムの目線でご紹介します。

主催者の立ち姿

KASHIMA STADIUM DRONE RACE 2023(U99)を主催した犬飼さん

国内初のドローンレースが開催できるまでの経緯

本日はどうぞよろしくおねがいします。

――犬飼さん:よろしくおねがいします。

Q.普段は犬飼電工株式会社でドローンを使って高所などの点検や撮影をする事業をされている犬飼さん。ドローンと出会うきっかけは何だったんでしょうか?

――犬飼さん:最初は仕事に使えないか? と......例えば高い所にのぼらず屋根の点検ができたらな、という思いがきっかけだったと思います。それがいつの間にか......、ドローンレースにはまるきっかけとなったのは、海外のドローンの映像です。LEDをつけて森の中を駆け抜ける映像だったのですが、それがスターウォーズの世界そのもので感動したんです。気が付けば、どっぷり浸かっていましたね。

Q.なるほど。今ではドローンイベントを主催し、ご自身もドローンレーサーとして活躍される犬飼さん。ドローンレースをカシマスタジアムで開催することになった経緯を教えてください。

――犬飼さん:アメリカのマイアミでは、スタジアムで開催する夜間レースがあって、日本のレーサーとしてはそれは一つの憧れだったんです。ただ、日本には日本特有のハードルがあって、まだその前例はありませんでした。レーサー目線で「こんな場所」で飛ばせたらな、と方々で口に出していたんですが、その声が鹿島アントラーズに届き今回実現することができました。

大会中のスタジアムの様子

スタジアムの照明の中、夜間に行われた大会の様子

開催へのハードルのひとつは日本の事情

Q.念願がかなったわけですね。先ほどの「日本特有のハードル」とはなんでしょうか?

――犬飼さん:以前に比べれば緩和されていますが、ドローンの運用には電波法や航空法などで定められたさまざまなルールがあります。そのため、申請等が煩雑になってしまう傾向はあると思います。今回、U99ということで「99g以下」のドローンだけの大会にしたのもこういう理由からです。この規格までのドローンであれば、夜間レースなどの申請が比較的容易になるんです。

100g未満のドローンと100g以上のドローンで何が変わる?

機体重量が100g以上のドローンは、航空法に基づき無人航空機として扱われます。登録の手続きはもちろん、登録記号の表示が義務づけられます。またリモートID機器を搭載して識別情報や動的情報を電波で遠隔発信できるようにしておかなくてはなりません。リモートID機器が内蔵されているドローンであれば心配ありませんが、そうでないドローンも少なくありません。その場合は、ユーザーが外付けでリモートID機器を装着する必要があり、ハードルが高いとされています。

小型のドローンが並ぶ様子

99g以下のドローンが並ぶ

Q.ゴーグルへの映像伝送も無線通信を使っていますよね?

――犬飼さん:はい。こちらは5GHz帯のアマチュア無線の帯域を使っています。利用するためにはアマチュア無線の免許が必要なので、小中学生のレーサーでも、みんなアマチュア無線の免許を持っているんですよ。

それはすごいですね!

健全な電波環境と無線技術の進化が可能にした大会

Q.会場の電波環境については、どのような準備を行ったのでしょうか?

――犬飼さん:NTTBPさんに「ドローン飛行時の利用周波数帯」「混雑度合の確認」を調査いただきました。例えば、ドローンが送受信する電波がWi-Fi通信に影響するかどうかを、周波数帯ごとに調べてもらいましたね。その結果、エリア内の電波環境がレース開催には問題がないこと、仮に影響があるとしてもごく軽微であることが分かりました。

電波調査をする機器の外観

スタジアムの電波状況を調査する様子

Q.Wi-Fiとドローンの操縦は同じ2.4GHz帯を使いますよね。ドローンとWi-Fiが干渉した例もあるのでしょうか。

――犬飼さん:制御用リモコンから離れた場所で、ドローンがWi-Fiスポットに近づくようなことがあれば影響が発生することもあるようです。会場の管理者の方へWi-Fiの2.4GHzを停波してください、とお願いすることはできますが、当然強制力も確認手段もありません。今回の大会ではNTTBPさんに現場の電波環境を調査いただいき、レースに影響がないことを確認することができました。

Q.今大会は「スタジアム開催」以外にも「国内初」があると伺いました。

――犬飼さん:そうなんです。実はこの大会は国内初の「デジタル方式」だけのドローンレースなんですよ。

Q.デジタル方式とは何ですか?

――犬飼さん:ゴーグルに伝送する映像にデジタル伝送システムを採用したんです。とくにFPVでは数年前までアナログが一般的でした。従来のデジタル方式では、映像の遅延が20ミリ秒程度出ていました。わずかな時間に思えますが、時速100kmを超えるレースの世界では、それが致命的な差になってしまうんです。それが近年、技術力があがってほとんど遅延を感じず使えるようになったのです。その他にも、リンクが外れにくい、マルチパスの影響を受けにくいなどの要素をクリアしたため、レースに採用できるようになりました。

Q.その他に大会を運営するうえで、電波環境について気を付けていることはありますか?

――犬飼さん:競技ですから、念のため第三者による妨害電波などの可能性も考慮して、電波のヒストリーを記録しています。過去に別の大会で、何かイレギュラーが起こったことをモニタリングして、リスタートとなった事例がありました。

夢の対戦も実現!リアル vs メタバース

Q.まさに、日進月歩の技術と犬飼さんの情熱と経験が実現させた大会ですね。

――犬飼さん:ありがとうございます。今回の大会ではフランスの操縦者にVRChat内でドローンを飛ばしてもらい、「リアル vs メタバース」のバトルというエキシビションなレースもやったんです。これも史上初だと思います(笑)。これはドローンの通信と会場の通信のどちらもしっかりしていないとできないイベントだったと思います。

メタバース内でドローンが飛ぶ様子

リアル vs メタバースのドローンレースは史上初

Q.それは見たいですね! 

――犬飼さん:まだよく知らない、という方々にそう言ってもらうことが大事だと考えています。スタジアムならではというところでは、ホームスタンド側の大型スクリーンにリアルタイムでレースがモニタリングされます。より臨場感のある観戦になりますよ。

Q.どんどん楽しみになってきました!

――犬飼さん:今回のようなU99大会、そしてスタジアムでの開催という前例をきっかけに、もっともっと世界の大会を誘致し、ドローンレースが身近になってくれればと思いますね。日本には世界でもトップレベルの選手が何人もいます。小中学生の若いレーサーの実力も育ってきているので、ぜひ注目してほしいですね。

Q.本日はどうもありがとうございました。

――犬飼さん:ありがとうございました。

さいごに

インタビュー後に実際にドローンレースを観戦させていただきましたが、国内初のドローンレースイベント、その盛り上がりはまさに圧巻でした。観客は時速100kmを超えるスピードで飛ぶドローンに目を奪われ、そのパワーと高速性に感嘆していました。

広大なカシマサッカースタジアムを舞台に、最高の競技環境でレースに臨むことで、改めてドローンレーシングの魅力を体感できたと、レーサーのみなさんからも大変好評だったそうです。

ドローンレースでは急なマシントラブルも少なくありません。幸いにも今大会では大きなトラブルもなく、この新たな挑戦となるドローンレースイベントは盛況のまま幕を下ろしました。ノウハウがまだない中での開催でしたが、この成功は今後のモデルケースとなり、ドローンレースというエキサイティングなイベントが国内でも定着していくことでしょう。

大会の様子はYouTubeでも見ることができますよ!
(※YouTubeに移動します、再生前にWi-Fiに繋いでくださいね)
KASHIMA STADIUM DRONE RACE 2023

ドローンレースをまだ見たことない人は、ぜひ見に行ってみてください。今後の大会を楽しみにしましょう!

NTTBPではイベント会場などのWi-Fi環境構築の他、無線電波環境の調査なども行っています。 電波環境でお悩みでしたら、NTTBPにお気軽にお問い合わせください

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