2.4/5/6GHz帯同時運⽤時のSSID設計について―― 同⼀SSIDか別SSIDか

   

業務⽤アクセスポイントでは、複数のSSIDを設定し、2.4GHz・5GHz・6GHzといった異なる周波数帯を同時に運⽤することができますが、同じ⽬的で、複数周波数帯でのWi-Fi運⽤をする際、各バンドに同じSSIDを割り当てるか、それぞれ別のSSIDにするか、悩む声も聞かれました。
そこで今回は、どう使い分けるべきか、規格の特⻑と現場の声も含めてまとめてみました。

ワイヤレステクノロジー部新技術担当

 

こんな人におすすめ

 

・ ⾃社の通信インフラを担当するエンジニア
・ ITインフラ構築・運⽤を受託している企業で構築を担当しているエンジニア
・ フリーWi-Fiサービス提供に関わる⽅

前提①:⽬的や利⽤者が異なる場合は別SSIDで

利⽤⽬的や対象となるユーザーが異なる場合は、当然ながら別のSSIDで運⽤しましょう。
例えば業務⽤ネットワークと来店者向けフリーWi-Fiでは、接続フローや要求されるセキュリティレベルなども⼤きく異なります。
SSIDを分けることで、VLANによるネットワーク分離や、帯域制限といった運⽤もしやすくなります。
また、⼀部のアクセスポイントではデュアル5GHzも可能です。SSIDだけでなく、同じ5GHz帯の中でチャネルも別にして、より相互の電波⼲渉を抑えた運⽤も⾏えますね。

前提②:1台で運⽤するSSID数は少なめが望ましい

業務⽤アクセスポイントでは、技術的には多数のSSIDを同時に設定して運⽤することが可能ですが、SSIDを増やしすぎるのはおすすめしません。
アクセスポイントは端末が接続先を⾒つけられるよう、各SSIDごとに優先的に通信されるビーコン(制御信号)を定期的に発信しています。⼩さな通信ではありますが、ビーコン信号は低速かつ送信完了まで時間がかかるため、SSIDの増加によってビーコン信号が多くなると通常の信号を送信する機会が減ってしまいます。これによって、通信そのものの品質にも影響を及ぼす可能性があります。
さらに、接続端末のネットワーク⼀覧にSSIDが多数表⽰されることで、どれに接続すればよいか分かりづらくなるといったユーザビリティ上の問題もあります。

当社では、1台のAPあたり5〜6個程度までに抑えるのが適切と考えています。スタジアムのような⾼密度環では、SSIDは最⼤でも4つ程度に絞り込むことで、通信の安定性を確保しています。

「部署ごとにSSIDを分けたい」「⽤途ごとに分けたい」といった要望が積みあがって、気づけば10以上のSSIDを1台で......、なんてこともあるかもしれませんが、エリア毎に不要なSSIDは設定しないなど整理して、最低限に抑えましょう。

6GHz帯を使う場合は同じSSIDでマルチバンドを推奨

当社では、業務⽤ネットワークにおいても、フリーWi-Fiにおいても6GHz帯のみで運⽤する、ということはまずありません
また、複数の周波数帯で運⽤する場合も同じSSIDであることが推奨されます。
以下が主な理由です。

① 6GHz帯に対応していない端末もまだ⼀定数ある
② 6GHz帯のシングルバンドだと初回接続に時間がかかったり、接続できない端末がある

②について補⾜します。6GHz帯ではより広い帯域を利⽤できるようになったため、従来と同じスキャン⽅法では検出に時間がかかってしまい現実的でありません。その解決⽅法の⼀つとして、2.4または5GHz帯のビーコンに付与した情報で6GHz帯を検出できる技術が採⽤されています。ほかに、20MHzのチャネルすべてをスキャンするのではなく、80MHzごとにスキャンをすることで効率化するなど、別の⽅法もありますが、2.4または5GHzとのマルチバンド運⽤にはほかのメリットもありますので、同じSSIDでの運⽤がおすすめです。

参考情報:
Wi-Fi 6E 帯域の動作とクライアント接続の設定および確認 - Cisco

Enhanced OpenのOnlyモードを利⽤する場合

6GHz帯のSSID構成を考えるうえで、もうひとつ重要なポイントがあります。6GHz帯の利⽤には、WPA3またはEnhanced Openのいずれかのセキュリティ⽅式が必須であるということです。

従来のオープンな形で提供されていたフリーWi-Fiに6GHz帯を追加する場合、ユーザーの使い勝⼿を変えずにセキュリティを確保できるEnhanced Openの採⽤が現実的です。ただし、Enhanced Openに⾮対応の端末も存在するため、不特定多数の利⽤するフリーWi-Fiの場合はそれを⾒越した構成が求められます。

Enhanced Openには、TransitモードとOnlyモードの2種類があります。
Transitモードでは、1つのSSIDで対応端末はEnhanced Open、⾮対応端末は従来通りオープンなまま接続され、シームレスな運⽤が可能です。基本的には、構成案Aのように1つのSSIDで運⽤し、⾮対応端末もTransitモードでカバーする⽅式がよいでしょう。

⼀⽅で、Enhanced Openの専用のSSIDでWi-Fiを提供するOnlyモードでないと正しく動作しないアクセスポイントも一部確認されています。この場合は、構成案Bのように6GHz帯を含むEnhanced Open対応SSIDと、従来通りのOpenなSSIDを並⾏して運⽤する必要があります。

関連情報: Enhanced Open - フリーWi-Fiも安全に。新しいセキュリティ規格:NTTBP

構成案A

構成案B

2.4GHzと5GHzの場合はユースケースによって分けるのもアリ

6GHz帯では制限事項があり、現時点では周波数帯でSSIDを分ける、ということはしづらいですが、2.4GHz帯と5GHz帯の同時利⽤の場合はユースケースによって、異なる運⽤をしています。
以下が⼀般的なメリットとデメリットです。

同じSSDIと別のSSIDのメリットデメリット

フリーWi-Fiの場合は、同じSSIDにしていることが多い

フリーWi-Fiなどの不特定多数が利⽤するケースでは、多くの場合はSSIDを統⼀しています。多くのアクセスポイントのではバンドステアリングがデフォルトでオンになっており、よりよい帯域に⾃動でつながります。不慣れなユーザーにとってもわかりやすく、提供者としてのアナウンスも容易です。

別にする場合はわかりやすい名称を

ただし、統⼀するとトラブル時に原因の切り分けがしにくいため、業務利⽤の場合は別にすることもよくあります。その場合はSSIDの末尾に「_2G」 「_5G」などとついていることが多いですね。
また、フリーWi-Fiであっても、別のSSIDで運⽤しているケースもあります。ただ、その場合は「_2G」 「_5G」のような周波数表⽰では分かりにくい場合があるので、「_slow」 「_fast」など直観的に分かりやすく表⽰するアイデアもあります。

Wi-Fi 6Eや7の登場で、6GHz帯とのマルチバンド運⽤も今後増加することが⾒込まれます。
Wi-Fi7ではMLO(Multi-Link Operation)も利⽤可能になり周波数帯をまたいだボンディング(同時接続)も可能になるため、今後は周波数帯でSSIDを分ける、といった考え⽅でではなくなっていくかもしれませんね。

関連情報:Wi-Fi 6 − 6GHz帯が加わった最新通信規格 : NTTBP|NTTブロードバンドプラットフォーム

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