Wi-Fiにおけるエントランス回線の重要性と選定ポイント

事業戦略室

Wi-Fiにおけるエントランス回線の位置づけ

Wi-Fiだけではインターネットは速くならない

近年、Wi‑Fi 6EやWi‑Fi 7の普及により、無線区間の通信性能は大きく向上しています。
しかし、通信品質はWi‑Fiだけで決まるものではありません。
Wi‑Fiを通じて送受信されたデータは、光回線やモバイル回線といった、エントランス回線(バックホール回線とも)を経由して、インターネットに接続されます。

光回線やモバイル通信回線とNTNの概要を表す図

特に、同時接続端末数が多い環境やクラウドサービスへの依存度が高い業務用途では、エントランス回線の設計が通信品質を大きく左右します。業務の品質や効率に直結することも少なくありません。
無線機器選定と同様に、ネットワーク環境構築において重要なポイントといえるでしょう。

エントランス回線の主な選択肢

業務用Wi-Fiにおけるエントランス回線の選定では、以下のような観点を整理することが重要です。

  • 利用環境(固定拠点か、移動体・仮設環境か)
  • 同時接続端末数や利用用途(業務系か、大容量通信か)
  • 通信品質の要求水準(安定性、遅延)
  • 導入条件(工事可否、設置制約)
  • 冗長性の必要性(回線の二重化)
  • コスト構造(初期費用と運用費用)

現実的な選択肢は光回線かモバイル回線

業務用Wi-Fiにおけるエントランス回線の選択肢は、主に光回線、モバイル回線です。
最近では、第三の選択肢としてNTN(衛星コンステレーション)の活用も進みつつあります。ただ、機能面でもコスト面でも、まだ十分とは言い難く、光回線やモバイル回線が利用できない場合に検討するのが一般的です。

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回線ごとの特長
光回線 モバイル回線 NTN(衛星回線)
主な利用環境 移動体(バス・船舶等)、工事現場など仮設環境、回線工事が困難な場所 山間部・離島など、光・モバイルが使えない環境
導入条件 工事不要 専用アンテナの設置が必要(配線工事は不要)
メリット 安定性が高い/遅延が低い/帯域確保しやすい → 多端末・大容量通信に強い 可搬性が高い/工事不要 光・モバイルが届かない環境でも通信可能
留意点 回線工事の工期やコストが発生 都市部やイベント会場など混雑環境に不向き/地下など電波状況の影響が大きい 樹木・建物や雨など天候の影響が大きい/遅延が大きく安定性に欠ける

強みを生かして補完しあう方法も

どれか一つの回線方式に依存するのではなく、複数の手段を組み合わせて利用するケースもあります。
例えば鉄道車両では、停車中の駅では光回線を、走行中はモバイル回線を、トンネル内ではLCX(漏洩同軸ケーブル)を利用し、モバイル回線が圏外となる区間のみ衛星通信を用いる、といった構成も検討されています。
また、状況に応じた使い分けとして、平時は光回線やモバイル回線を利用し、災害時のみ衛星通信を活用する方法も有効です。

回線プラン選定における実務的なポイント

選択するプランによって実効性能や安定性は大きく異なります。
エントランス回線がボトルネックとならない選定が必要です。

回線プランのグレード

光回線では、1Gbpsクラスのプランに加え、「フレッツ 光クロス Biz」のような10Gbpsクラスの法人向けサービスも提供されています。
こういった法人向け高速プランを採用することで、より高い通信性能を利用できる環境が整います。
一方で、家庭向けプランをそのまま業務用途に利用した場合など、想定した性能が得られないケースもあります。

帯域優先制御などによる通信品質の確保

光回線やモバイル回線の多くは、複数の利用者で帯域を共有するシェアリング型の回線です。
そのため、時間帯や周辺環境によって通信品質が変動することがあります。
安定性を高めるためには、専用回線や帯域を優先的に利用できるプランも選択肢となります。

高い業務継続性が求められる環境や、遅延が許されないシステム、厳格なセキュリティ要件が必要な分野では、専用回線が採用されますが、そこまでの要件ではないものの、通信品質の安定性を高めたい場合には、混雑時に通信が優先的に処理される仕組みを備えたプランの活用も有効です。
例えば、モバイル回線の法人向けプランでは、ドコモ 5Gワイドなどがこれにあたります。
当社の検証においても、混雑した公衆無線LAN環境のエントランス回線として採用した結果、スループットの改善が実際に確認されました。

ボトルネックはWi-Fiか、回線か?

実際の現場では、ボトルネックがWi‑Fi環境にある場合も、回線側にある場合もあります。さらに、両者が同時に影響しているケースも少なくありません。

Wi-Fi側:
外来波や設置環境による干渉・混雑、エリアカバーの不足、障害物による電波減衰、アクセスポイントの性能や規格による制限 など
回線側:
帯域不足、混雑、契約プランによる制限 など

ほかにも、スイッチなどのネットワーク機器、接続方式(IPoE/PPPoE)の違い、端末やアプリケーションに起因する問題など、要因は多岐にわたります。例えば、フレッツ 光クロス Bizのようなプランでは対応した接続方式やネットワーク機器でないと、実力が発揮できない、なども起こりうるケースです。もちろん、接続先のインターネットサービス側に原因があるケースもあります。

そのため、業務用Wi-Fiの改善においては、ネットワーク全体を俯瞰して評価すること、そのための調査が極めて重要になります。

サイトサーベイの活用

例えば、BPサーベイ(無線LANサイトサーベイ)では、電波環境の調査だけでなく、インターネットから端末までのスループットや遅延なども基本メニューとして測定します。
これにより、通信品質の低下がWi-Fi環境に起因するものなのか、エントランス回線を含めたネットワーク全体に起因するものなのかを切り分けて把握することが可能になります。

(例)NTTBP開発調査アプリによるスループットの時系列データ

スループットの時系列データ例

関連情報:BPサーベイ(無線LANサイトサーベイ)|NTTBP

ネットワーク全体を見据えた設計を

業務用Wi-Fiの構築・改善においては、個々の要素を個別に最適化するのではなく、ネットワーク全体を俯瞰した設計が重要です。
特定の技術や方式に依存するのではなく、エンドツーエンドで通信経路全体を捉えた検討が求められます。

例えば、エントランス回線とWi-Fiを組み合わせた単純な構成だけでなく、無線区間にWi-Fi以外の方式(LPWAやローカル5G)を採用する、あるいは端末にSIMを直接実装するなど、あらゆる選択肢をフラットに検討することで、より適切なネットワーク環境を設計できるでしょう。

当社では、エントランス回線の選定を含めた無線環境の設計・構築および、現状調査やコンサルティングを行っています。
光回線だけでなく、モバイル回線についても、新幹線Wi-Fiなどの運用を通じて蓄積してきた知見を活かし、運用・手配をしております。
また、StarlinkやOneWebといった衛星コンステレーションを含めた構成についてもご対応可能です。


さらに、振動や温度条件を考慮した機器選定や、屋外環境に対応した耐候性を備える機器の選定といった、現場環境に応じた支援をさせていただいております。
ぜひご相談ください。

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