アクセスポイントとPoE給電規格のミスマッチで起こる、 動作制限に注意

LANケーブルから給電するPoE(ピーオーイー / Power over Ethernet)は、配線⼯数を削減し無線LANアクセスポイントの設置⾃由度を⾼める有効な⼿段です。
ただし、PoEスイッチやインジェクターが下位規格にしか対応していない場合、アクセスポイントの能⼒を最⼤限発揮できないことがあります。
今回は、当社で導⼊実績の多いHPE Aruba Networkingのアクセスポイントを中⼼に、スイッチやインジェクタとアクセスポイントのPoE規格のアンマッチによって発⽣しうる、主な制限事項をまとめてみました。

NTTBP ワイヤレステクノロジー部新技術担当 ⼤宮陸

こんな人におすすめ

・ ⾃社の通信インフラを担当するエンジニア
・ ITインフラ構築・運⽤を受託している企業で構築を担当しているエンジニア
・ ネットワーク機器の選定・購⼊に関わる⽅

今回確認した機器

・ HPE Aruba Networking AP-505/515/565/613/635 他

前提:PoE規格は下位互換性がある

PoE規格には下位互換性があります。また、機能制限は基本的に、PoEスイッチやインジェクターが下位規格(または低出⼒クラス) にしか対応していない場合や電⼒が不⾜する際に発⽣します。

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ただし、対応できる電⼒が⼤きいほど、機器の価格は当然⾼くなります。そのため、予算に⼗分な余裕があるようであれば、IEEE802.3bt のできるだけ⾼出⼒クラスのものを選定しておけば、将来的な拡張性も含めて安⼼ではあります。

802.3af (PoE)[13.9W クラス3]

ほぼ全機種で機能制限または⾮対応

802.3afの機器では今回確認したすべてのアクセスポイントで機能制限がかかるか、そもそも⾮対応のいずれかでした。

機能制限の例

AP-505、AP-615 ... USBポート無効
AP-565/567 ... MIMO機能の縮退 など

⾮対応

AP-515、AP-574/575、AP-655 など

802.3at (PoE+)[25.5W クラス4]

上位モデルを中⼼に機能制限。Wi-Fi6E(6GHz帯)対応時は注意

AP-505や515、615などの機種では802.3atであれば制限なしで機能を利⽤することができるようです。
ただし、屋外向けであるAP-574/575やWi-Fi6Eに対応したAP-635以上の機種などでは、何らかの制限がでてくることがほとんどでした。
⼀⽅で、完全に⾮対応というのものはありませんので、機能制限を許容できれば利⽤⾃体は可能です。

制限なし

AP-505、AP-515、AP-565/567、AP-615 など

機能制限の例

AP-574/575 ... 2nd Ethポート無効
AP-635、AP-735 ... USBポート無効
AP-655 ... USBポート無効、2nd Ethポート無効、MIMO機能の縮退 など

802.3bt (PoE++) [51W クラス6 / 40W クラス5]

クラス6であれば制限なく利⽤できる。クラス5だと、ごく⼀部のハイエンドモデルに機能制限あり

クラス6では確認したすべての機種で機能制限なく利⽤できました。
しかしAP-655、AP-755といったハイエンドモデルの場合は、btであってもクラス5以下だと⼀部機能に制限がかかってしまいます。

51W クラス6はどの機種も制限なしで利⽤可能

40W クラス5の場合の機能制限の例

AP-735 ... USBポート無効
AP-655 ... USBポート無効、2nd Ethポート無効、MIMO機能の縮退 など

802.3atで⼗分なのか、802.3btが必要なのかが1つの分岐点

これまで⾒てきた内容をざっくりまとめると、以下のようになりました。

202506_poe01.png

上位モデルであれば、カバーできるとはいえ、構築する無線環境に応じて、アクセスポイントを選定するのと同様、PoEスイッチやインジェクターも適切なものを選択できるといいですね。

ちなみに、今回はArubaのアクセスポイントで確認しましたが、同程度のグレードであれば他社製品でも同じような傾向が⾒られましたので、参考になればと思います。

補⾜:PoEスイッチ全体の合計電⼒量にも注意

ここまでPoEの規格による機能制限について⾒てきましたが、あわせて確認しておきたいのがPoEスイッチ全体の電源容量です。
PoEスイッチには、給電可能な電⼒量に上限があるため、すべてのポートにフル出⼒の機器を接続できるとは限りません。
たとえば48ポートあるスイッチであっても、電源容量の関係で使⽤するAP数を10台程度に絞って運⽤しているケースもあります。

アクセスポイントなど接続する機器それぞれの消費電⼒を合計し、スイッチの最⼤給電能⼒を超えないように設計することが重要です。
PoE給電については以下のページでも解説していますので、あわせてご確認ください。

PoE − LANケーブル給電で配線を簡素化 : NTTBP|NTTブロードバンドプラットフォーム

本記事は、2025年5⽉時点のHPE Aruba Networkingアクセスポイントの各機器の情報を参考に編集しています。
機能制限の状況はアクセスポイントのファームのアップデート等で変わる可能性もありますので、購⼊の際にはメーカーの最新情報をご確認ください。

参考情報:HPE Aruba Networkingアクセスポイント

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